QoE(Quality of Experience)関連

QoE(Quality of Experience)

ネットワークの品質を評価するため,従来はQoS(Quality of Service)に該当する指標(パケット損失率,スループット等)を用いて直接観測可能な情報で評価が行われていました.しかし,通信を利用するユーザにとっては,同一のQoS(通信性能が同一)な環境においてもユーザがそれを利用する環境や状況に応じて品質の感じ方が異なるということが分かっています.

このように,人が知覚する通信品質をQoE(Quality of Experience:体感品質)と呼び,よりエンドユーザに近いところでの品質評価に用いる研究が行われています.QoEは人が知覚する品質のため,直接的に観測することはできませんが,品質評価実験などを通じた客観評価によってその評価を行うことができます.また,観測可能なQoSからQoEを推定するモデル化などについても幅広く検討が行われています.

オンラインゲームにおけるQoEモデルの検討

オンラインゲームをプレイする際には,通信遅延や通信帯域などのQoSがエンドユーザのQoEに強く影響を及ぼすことが知られています.しかし,QoSの変化がどの程度QoEに影響を及ぼすかについては,プレイヤーの属性(年齢,習熟度等)やゲームの種類によって大きく異なることも分かっています.

そこで,本研究室では,特定のゲーム種別においてユーザのQoEを最大化するために通信環境がプレイ品質に及ぼす影響の調査を行い,QoSからQoEを推定するモデルの構築を行っています.また,構築したモデルを用いて,QoEを低下させることなく通信資源を有効に活用するための検討も併せて行っています.

広告挿入がQoEに及ぼす影響の調査およびモデル化

近年急速な普及が進んでいる動画配信サービスでは,課金することで映像視聴が可能となるサービスの他,広告を閲覧することで無料で視聴可能となるサービスも数多く存在しています.そのような無料の動画配信サービスにおいては一般に,動画中に挿入される広告がユーザのQoEを低下させる要因となっています.また,ユーザのQoE低下に加え,広告の有効性が低下し,広告提供者にとっても利益を遺失することにつながります.

そこで,本研究室では広告挿入がQoEに及ぼす影響の調査を行い,広告の映像品質や内容が視聴動画に与える影響の分析によるモデル化について検討を行っています.また,構築したモデルを用いて,ユーザのQoE最大化と広告提供者の利益の最大化を実現するための広告挿入戦略についても検討を行っています.