IoTネットワーク関連

通信規格が混在したIoTネットワークにおける通信方式の検討

 

近年,スマートホームや環境モニタリング等を実現する手段として,モノのインターネット,所謂IoT(Internet of Things)に大きな注目が集まっています.IoTネットワークでは,従来より近距離通信に用いられていた無線LANやBluetoothに加え,センサネットワーク向けに開発された省電力通信が可能なZigBee,携帯通信網を利用する各種通信方式,LPWA(Low Power Wide Area)と総称される比較的遠距離通信が可能で低消費電力な通信規格など様々な通信規格を用いて各種機器をネットワークに接続しています.

 

一般的に,IoTネットワークに接続する通信方式は,非セルラ型セルラ型に大別することができます.セルラ型の通信方式を採用する機器では,取得したデータ等を直接携帯通信網を利用してクラウド等の集計処理を行うサービスに接続するのに対し,非セルラ型の通信方式を採用する機器では,比較的通信距離が短いという特性から一度IoTゲートウェイ等のローカルな集約装置へ送信し,その後にクラウド等へ送信処理を行います.そのため,ローカルな非セルラ型IoTネットワークにおいては,特定の領域に複数の通信規格による通信が混在することとなり,非効率な周波数利用や干渉等による性能劣化の一要因となることが想定されます.本研究室ではこの問題に対し,従来研究で提案されたSSGW(Solution Specific GateWay)と呼ばれる一部の通信規格を収容可能な比較的低コストで運用可能な装置を用い,通信規格の変換を行いつつ相互通信やIoTゲートウェイへの通信を行うための通信方式,特にリンク信頼性に基づくOpportunistic Routingを応用したルーチング方式について研究を行っています.また,実機実装による実環境における通信実験により,その性能評価も併せて行っています.

IoTネットワークにおける異常検知および状態復旧に関する検討

一般に,IoTネットワークでは大量の機器が 特定の空間内に存在し,主にM2M(Machine to Machine)通信にて情報収集や機器の制御を行っています.そのため,ネットワーク管理者は個々の機器の状態監視やネットワークのトラヒック監視を行うことで機器が正常に動作しているかの確認を行う必要があります.しかし,端末数やトラヒックの増加に伴い,人が全ての状態を管理することが困難となっている.

そこで,端末が大量に存在するIoTネットワークにおいて,攻撃等によって端末に異常が発生した際にそれを検知し,正常状態に復旧するための検討を行っています.具体的な方策としては,従来より数多くの検討が行われているトラヒックの統計的分析と併せて機械学習を利用した異常トラヒックの検知を行い,端末異常を検知します.また,正常状態への復旧には,WoT(Web of Thing)におけるThings Descriptionを利用してた方法などによって管理端末から初期化/再起動等の指令を機器側に通知することで実現します.ただ,単純な初期化/再起動などではまた同じ異常状態になる可能性があるため,詳細なログ情報を基に原因を取り除くための検討も並行して行っています.

IoTネットワークにおける負荷分散

IoTネットワークにおいて,各IoT機器が直接ネットワークに接続せずにIoTゲートウェイと呼ばれる端末に一度集約し,IoTゲートウェイがインターネット上のクラウド等と通信を行うネットワーク形態が広く利用されています.このネットワーク形態では,各IoT機器はIoTネットワーク内だけで通信をするだけでよく,外部との通信を全てIoTゲートウェイに委任することができます.

一方,IoTゲートウェイが全ての外部との通信を中継するということから,IoTゲートウェイ付近の通信負荷は必然的に増加することとなります.そのため,輻輳の発生に伴う通信効率の低下が問題となる可能性があります.そこで,IoTゲートウェイ付近での通信負荷分散のため,従来より検討が行われている空間的負荷分散(経路制御による負荷分散)と併せて,輻輳制御と同様に単位時間当たりに発生するトラヒック量を平準化する時間的負荷分散を用いて統合的に負荷分散を行う手法の検討を行っています.