UAV・アドホックネットワークと自律移動制御
背景と課題
ドローンなどの無人航空機や無人移動体技術の急速な進化に伴い,地震被災地や山岳遭難エリアなどの人間が立ち入ることが困難な災害現場における迅速な捜索・救助支援であるSAR活動や,インフラの広域的な自律点検に期待が集まっています.
しかし,UAVにはバッテリー容量や搭載センサーの検知範囲に厳しい制約条件があります.また,既存のモバイル回線や基地局といった通信インフラが完全に遮断された極限状態において,多数のUAVが衝突を避けつつ,ネットワークの断絶を回避しながら効率的な探索経路の計画やアドホック通信網の維持を行うことは極めて困難であり,高度な連携制御アルゴリズムが求められています.
当研究室のアプローチ
当研究室では,分散自律協調制御アルゴリズムとワイヤレスアドホックネットワーク技術を組み合わせ,過酷な環境下で稼働するマルチUAVシステムおよび無線センサーネットワーク(WSN)の最適化を進めています.
1. 災害探索・救助のためのマルチUAV協調・経路計画アルゴリズム
被災地エリアごとに被災者の存在確率や地形的な危険度などの想定リスクを動的に評価し,UAV群が効率的に役割分担を行って捜索範囲を網羅する移動制御アルゴリズムを研究しています. 昆虫の群れ行動から着想を得たLocust-inspiredアルゴリズムを応用した自律行動アルゴリズムや,ゲーム理論におけるオークション型交渉アルゴリズムを用いることで,時間が経過するにつれて生存率が急激に低下するゴールデンアワーと呼ばれるタイムリミット内に,最も効率よく要救助者を発見できる協調的な経路探索モデルの研究を進めています.
2. アドホックネットワークおよびFANETにおける日和見ルーティング(Opportunistic Routing)と遅延耐性通信
ドローンや車両などの移動体間で構成されるアドホックネットワークにおいて,無線通信の同報性(ブロードキャスト)を活かして動的に中継ノードを選択する日和見ルーティング(Opportunistic Routing)技術を研究しています.ノードの移動や遮蔽によるリンクの頻繁な切断に対して頑健なデータ転送を実現するため,ノードの信頼性評価を組み込んだセキュアなルーティングアルゴリズムを提案しています.また,長時間のリンク断絶が発生する環境においては,データを一時的に蓄積して中継ノードの物理的な移動によって目的地へ運ぶ遅延耐性ネットワークであるDTN技術を組み合わせ,地上センサー群とUAVをハイブリッド連携させた高効率な被災情報収集移動・通信制御モデルの研究や,ネットワークの維持に重要となるキーノードを動的に特定・保護するトポロジー制御手法の研究も行っています.
3. 無線センサーネットワーク(WSN)の自律維持とセキュリティ
UAVの通信・データ収集基盤となる地上センサーネットワークの長寿命化・健全化も研究テーマの1つです. 無線充電UAVを用いてセンサーネットワークの電力消費量を予測し効率的に充電を行う経路選択手法や,ネットワーク内に侵入した少数の不正・破壊ノードを動的に排除する多角的なノード検出手法を提案・実証しています.また,センサーネットワークのデータ収集をドローンの協調制御で効率化する飛行モデルの開発も進めています.