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QoE指向マルチメディア通信制御

体験品質(QoE) 動画ストリーミング 動的リソース割当 エッジコンピューティング(MEC) 興味度と集中度 クラウドゲーミング パケット損失隠蔽(PLC) 広告QoE
QoE指向マルチメディア通信制御

背景と課題

スマートフォンやPCを通じた高精細なYouTubeやNetflixなどの動画ストリーミングや,リアルタイム性の高いオンラインゲーム,クラウドゲーミングが広く普及しています.しかし,従来の通信制御はスループットの最大化やパケット遅延の均一化など,ネットワーク層 of 物理的な品質指標であるQoSの最適化に偏っていました.

これでは,動画再生中にビットレートの切り替えが生じることによる急激な画質低下の視覚的なストレスや,ゲームプレイ時の重要な局面に生じるカクつきなど,ユーザが主観的に感じる不快感、すなわち体験品質であるQoEの低下を直接防ぐことができません.限られた無線ネットワークの周波数や,エッジサーバーであるMECのリソースを効果的に分配し,システム全体のユーザ満足度を最大化するための新しいアプローチが求められています.

当研究室のアプローチ

当研究室では,ユーザの主観的評価やコンテンツの特徴,およびゲーム環境のメタ情報を通信制御にフィードバックする,次世代のQoE指向の通信制御技術を研究しています.

1. ユーザの興味度や集中度に基づく動的通信リソース割当

視聴している動画のシーンに対するユーザの興味度(Attention)や集中度を考慮し,無線ネットワークの資源を動的に配分する手法を研究しています. MEC(マルチアクセスエッジコンピューティング)やSDMNを通じて,重要なシーンへ優先的に高品質な画質であるビットレートを動的に割り当て,そうでないシーンではリソースを抑制するCLQDBAなどの割当アルゴリズムを開発しています.また,モバイル端末での動画配信において,集中度に基づいて割当帯域をダイナミックに変更し,限られた帯域を有効利用する手法も提案しています.

2. 生体情報やユーザー属性を用いたQoE自動推定の個別最適化

従来の画一的なQoE評価ではなく,個々のユーザに寄り添ったパーソナライズ評価モデルを開発しています. 広告挿入時のユーザストレスや視認性を脳波や視線などの生体情報を用いて推定する手法や,ユーザごとの好みの違いに対応するためにクラスタ型連合学習を用いてQoE推定モデルを端末側で個別最適化する手法を研究し,プライバシーを守りつつより精緻な体験指標の獲得に挑んでいます.また,動画配信サービスにおいて,再生前や再生中といった広告の挿入位置や、広告自体に対するユーザの記憶定着度が、視聴体験全体の主観的QoEにどのような影響を与えるかといった詳細な評価・分析も行っています.

3. クラウドゲーミングにおけるゲーム状況に応じた動的帯域制御

FPSなどのマルチプレイヤーゲームにおいて,プレイヤー間のゲーム空間内での距離や戦闘発生確率を検知し,帯域配分を動的に切り替える制御技術を提案しています.プレイヤー同士が接近している激しい戦闘エリアには高いビットレートと低遅延の通信経路を重点的に割り当てることで,通信品質の低下による操作遅延や不利な状況の発生を抑制し,対戦ゲームとしての公平性と快適性を向上させます.

4. 高品質オーディオ伝送のためのパケット損失隠蔽(PLC)技術

ベストエフォート型ネットワークにおけるリアルタイムのオーディオ伝送では,パケットの損失(パケットロス)は避けられず,音飛びやノイズとなって現れます. 当研究室では,特に複数楽器が合奏するアンサンブル音源を対象に,深層学習と時系列予測を組み合わせたハイブリッド型のパケット損失隠蔽(PLC: Packet Loss Concealment)技術を開発しています.失われた音声波形の周波数・時間特徴量をAIモデル等で補完・予測することで,通信障害発生時にもノイズのないクリアな音楽再生を維持する技術を実現しています.